Breakfast in Saigon.

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1999年、サイゴン。

降り立ったのは、もう夜中で、私は仕方がないから(珍しく)タクシーに乗ることにする。それにしてももったいないので、巨大なバックパックを背負ったカナダ人の女の子たち(だってその巨大な鞄に国旗を丁寧に縫い付けていたのだ)に声をかけて、安宿街まで車をシェアすることにする。その有名な安宿街の通りの名を告げると、ドライバーは黙って頷いて、車を走らせる。夜の街は明るくて、バイクの喧騒が響いて、つい数日前までいた国境の町のあの暗い夜が、まるで嘘みたいだ。

宿は、1泊10ドルちょっとで見つかった。

水しか出ないシャワーも、ごわごわのシーツも、人型にくぼみがついたベッドにも、もう慣れっこだった。手早く荷をほどいて、シャワーを浴びて、私は涼しい顔で夜の街を見下ろした。

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毎朝。
目が覚めると、私はベトナムパジャマに着替えて(外出用なのだ、一応)、朝のにぎやかな街に出かける。
もう15年以上も前のことだから、今はもうそんなことをする人はいないのかもしれないが、その当時は、女の子たちも、おばさんたちも、朝のおでかけはおしゃれパジャマだった。南国らしい、派手なプリントの。

私はそのパジャマ(市場で買った)を自慢気に着て、気に入りのシン・トー屋さんでまずひと休み。ここは、果物のスムージーのお店で、新鮮な果物と氷、そしてたっぷりのコンデンスミルクを、そのつどブレンダーで作ってくれる。好みの果物は、2,3種類混ぜることもできるのだけど、私は鮮やかなピンク色の果肉のドラゴンフルーツがいちばんの気に入り。

ひんやりとしたスムージーで、身体を冷やしたら、朝ごはん。

街角のバイン・ミーの屋台で。それは、炭火の七輪で温めてもらうパンで作る、サンドイッチ。具は、私はレベーペーストが苦手だから、クリームチーズに替えてもらう、あの牛が笑っているラベルのやつ。パンはぱりぱりほかほかで、しゃきしゃきの酢漬けの野菜も入って、最後にふりかけるニョクマムの香りが食欲をそそる。できたての熱々を、頬張る。

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もしくは、フォー。店頭で、大きな鍋がぐつぐつと煮えていて、妙に低いプラスチックのテーブルと椅子がぐるりとそれを取り囲んでいる。

フォーは、生の牛肉に、熱々のスープを注いで、ちょうどしゃぶしゃぶみたいのにしたのや、ぷりぷりのチキンが乗っているのや、フィッシュボールみたいのが入ったのや、なんだかよくわからない全部のせみたいなのがあったけれど、私の下手なベトナム語がうまく通じなくて(ベトナム語は難しかった)、いつも周りの人に助けてもらって、注文をした。
プラスチックの椅子に座って、熱々のフォーを食べる。別籠には、もやしやミントやどくだみやバジルやコリアンダーなんかのハーブがたっぷりついてくる。

ベトナムのフォーがおいしいのは、実はその別籠の野菜のおかげだと私は思う。

たっぷりのハーブを新鮮な野菜を、熱いスープに放り込みながら、サラダみたいな感じでもりもり食べる。そのくらいに、野菜がたっぷり。ベトナムの食事には、新鮮で勢いのある野菜がいつも一緒だ。

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そんなフォーが懐かしくて、自分で作る。
サイゴンの朝ごはんの味を、ヴィーガン仕様で再現してみる。
スープは、野菜の切れ端をとっておいたのを集めて(玉葱の皮、大根の切れ端、クレソンの茎、人参の皮、キャベツの芯等々)、お水からぐつぐつと煮込んでベジブロスをとる。それに生姜とスターアニスとバイマックルー(こぶみかんの葉)で香りをつけて、塩で味をつける(ニョクマムも使わなかった)。そのスープで、薄く切った厚揚げを煮て、できあがり。

米の麺をゆでたのに、もやし、ベビーリーフ、クレソン、紫キャベツとコリアンダーをこんもりと。
この野菜たっぷりなのが、おいしいのだ。
器のぎりぎりまで熱いスープを注いで、サーヴするのが、ベトナムっぽい。

ちゃんと別籠にも野菜とハーブをのせて、テーブルに。
ライムを絞って、唐辛子をかけて、もりもり食べる。

旅でいちばんすきなのは、現地の朝ごはんを食べること。

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