My home away from home.

この街に来て、1年が経った。

古い写真を見ていた。
どうしても、東京の夏の景色がない。

狂ったようにシャッターを切ったあの桜の木々の下。
雨に濡れた紫陽花の淡い紫。
紅葉の金色に鮮やかな朱の陰影。
それでもいちばん好きなのは、真夏のあの熱だったのに。

夏だというのにつめたい、北ヨーロッパ特有の青く澄んだ空気を吸い込んで、私はあの亜熱帯の甘い湿度を思う。

朝、すでに眩しくて、お布団を干しながら全身に陽の光を浴びるのが好きだった。
昼、暑すぎてお弁当になっているおそばなんかを買いに行く、セブンイレブンまで歩く道。見上げる団地の、ほらあのカーテンが、私の家。白くぱたぱたしている洗濯もの。眩しい眩しい太陽。雲はもくもくと立ち上って、空はくっきりと力強く青い。
夕方の雨。スコールみたいな土砂降りの。埃っぽいみたいな、熱の解けてゆくような雨の匂い。
いつも通った駅までの道。綾瀬川を渡るあの橋。気に入りだった卵の安いスーパーマーケット。

ああ。みんな置いてきてしまった。

でも、私はここでまた。

気に入りの朝の散歩は、瀟洒なショウウィンドウの並ぶ小道を抜けて、ノールトアインデ宮殿の庭の横を通って、運河まで。
いつもカプチーノを買う、気に入りのカフェ。いつもおはようっていう。新聞やさん。
右に曲がれば、かつての私の母校。歴史のある、うつくしい建物。もう、12年も経つんだね。
友達とお茶を飲みながら、のんびり過ごすなんだか甘く懐かしい匂いのする午後。
彼とふたりでくつろいで囲む家族のテーブル。

どんなに遠く離れた場所でも、また何度も何度も繰り返し、「私の家」を作るのだ。

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